沖縄科学技術大学院大学(OIST)の博士課程についてご紹介します。OISTを志望される学生は、もしかすると海外留学を検討されている人が多いかもしれませんので、主に海外留学を検討されている層の学生がOISTを志望するきっかけになると良いなと思います。また、研究者目線でどういうことを重要だと思っているかということを中心に書きます。
まず大前提ですが、OISTは5年間の博士課程ですので、残念ながら高校から直接入学することはできません。そのため、OISTに入りたいと思っている人はまずは他大学の学部を卒業する必要があります。ただし、OISTにはインターンシッププログラムがあり、インターンシッププログラムでは学部生も受け入れている研究室もありますので、インターンシップに応募する等でOISTで研究することは可能です。
なお、ここで話す内容は一般的な公開情報に基づいたもので、特に内部ならではの情報は一切含んでいません。あと、私は専門が情報系ですので、情報系と他の分野では求められる能力が違う可能性があります。また、以下のことを実践したからといってOISTに入れるわけではないですが、一般的にはそりゃそうだよねーという感じの話をしたいと思います。
OISTの博士課程
OISTの博士課程の特徴として5年間の博士一貫課程となっています。教授陣は、国内外の有名な大学から移籍してきている人が多く、教員も海外トップ校の修了生であったりと、国内外のトップ校とも遜色のない教授陣となっております。私は情報系ですので、そこまでの実験設備は不要ですが、実験系の設備やサポートはかなり充実しているように思います。OISTの博士課程の特徴としては、博士課程在籍中に手厚い金銭サポートがあります。また、このサポートは大学院から支給され、教授が取ってきた研究費から支給されるわけではありません。そのため、海外大学に比べるとOISTへの進学は次の利点があると個人的には思ってます。
- 毎月の生活費と学費相当のサポートがある。
- 自分の研究に5年間取り組むことができる。
- 日本にあるので、医療は充実しています。また、ご飯も本島と何も変わらないです。(ラーメンと沖縄そばが同じカテゴリ?なのでラーメン屋は少ない気がします。)
一方で海外(主にアメリカ)に行く大学のメリットとしては
- 毎月の生活費と学費相当のサポートがある。
- ネットワーキング (北米等でポジションを取る場合には非常に重要です)
- 同分野の優秀な学生との交流が容易
- ネームバリュー
私は日本でも海外のトップ校と遜色のないレベルの研究ができると思っていますが、OISTは新しい大学でありネームバリューや同分野の研究者がそこまで多いわけではないので、ネットワーキング等ではやはり海外大やその他の国内の大学に比べるとまだまだ改善の余地があると思ってます。なので、在学中には積極的に海外の大学や研究機関に滞在することや、学会で積極的にネットワーキングする必要があるように思います。特にOISTでは大学院から金銭的なサポートがあります。一方で、海外の大学は主に教授が取ってきた研究費から給料や学費が支給されます。この研究費が大学院から支給されるというはとても良い制度だと思ってます。そのため、PIからの制約が海外の大学にくらべかなり緩く、自分の興味のあることに取り組むことが可能です。(ただ、どこまで自由にできるかはやはり所属するPIときちんと話し合う必要があると思います。)
ちなみにですが、私のユニットのインターンでは毎年海外の有名大学から応募がそれなりにあります。去年は、イギリスのUCL、ETH、イリノイ大学、ペンシルバニア大学、エコールポリテクニーク等から学生を受け入れました。なので、研究室は国際的にはそれなりに認知されているのだと思います(多分)。他のOISTの研究室もめちゃくちゃ面白い研究してますので、海外大学を受ける際にOISTも検討されると良いような気がします。
OISTの博士課程のページに詳細情報が載っていますので、きちんとした情報はこちらのページをご参照ください。
学部卒業後でOISTに興味のある人
基本的に以下のことを意識するのが良いような気がします。繰り返しますが、以下ができたからといってOISTに入れる保証はないですが、OISTを含め海外大に応募する際には役立つと思います。
- 良い成績を取る (GPAは高い方が良いです)
特に研究で必要な教科の成績が重要だと個人的には思います。機械学習系ですと、数学系やプログラミング系の成績は研究成果が無い場合の根拠になると思います。一部の例外もなくなはいですが(いかに少ない労力で単位を取ることを目指す人でめちゃくちゃ研究ができる人もいる)、基本的にはかなり例外ですので、できる限り良い成績を目指しましょう。研究と勉強は別物ですが、少なくとも授業の内容をきちんと理解できるという証明にはなります。 - 英語を頑張りましょう
OISTは英語が公用語となっています。英語ができないと面接の時にきちんとアピールすることができないと思います。また、今後研究者になる人には英語は必須です(少なくとも2024年12月の時点では)。 - 卒業研究を頑張りましょう
私たちの分野(機械学習や人工知能)はものすごい人気で競争が過激しており、基本的にみんなGPAは高いです。しかもみんな英語ができます。その中でどうやって目立つかというと、GPA以外の何かです。そう考えた時に、大学院ではアウトプットすることが求められます。一番良いのは論文の執筆経験です。大学だと皆さん卒業研究やりますよね? そうです、卒業研究を全力で頑張りましょう。英語で論文を書いて、arXivにあげましょう。論文採択は運要素がありますが、論文の良さはarXiv等のテクニカルレポートを見れば判断できます。卒業研究でものすごく良い成果を出すと、今の研究室の教授から誘われれると思います。これはみんなwin-winですよね。 - リサーチインターンシップに応募する
OISTではインターンシッププログラムを募集しています。そこに積極的に応募するのが良いと思います。応募の際にCVとarXivの論文を一緒に送りましょう。私は毎日たくさんの研究室希望のメールを受け取ります(もちろん全てに返すことは不可能です)その中で論文を一緒に送ってくれる人はとても稀です。なので、論文を書いて送るのはとても有効だと思います。 - 良い推薦書を書いてもらいましょう
OISTは推薦書の提出を求めます。OISTに限らず海外大に応募の際には強い推薦書があるのは重要ですし、ポジションによっては推薦書が全てです。強い推薦書を書いてもらうためには日々の研究室での活動や授業での取り組みの姿勢が評価されます。また、複数の推薦書が重要となりますので、研究室だけではなく色々な人と共同研究して推薦書を書いてもらえるようにできると良いと思います。
修士課程後OISTに興味のある人
すでに学部を卒業して修士課程に入っている場合には、基本的に学部のGPAとかはあげることができませんので、研究でアピールするのがいいかなと思います。
- 論文を書いてarXivにあげましょう
修士の研究を国際会議に投稿しましょう。あと論文はarXivにあげましょう。論文採択は運要素がありますが、論文の良さはarXiv等のテクニカルレポートを見れば判断できます。当該分野だとNeurIPS, ICML, ICLR等の国際会議に論文があると海外大に応募する際にプラスにはなると思います。ただ、最近人工知能分野では業績がインフレしていますので、ちょっとどこまで重要かはよくわからないです。個人的にはしっかり書かれたテクニカルレポートの方が、トップ会議論文よりも重要な気がしますが、どうなんでしょうね。。。(他分野は多分違うと思います) - 英語を頑張りましょう
OISTは英語が公用語となっています。英語ができないと面接の時にきちんとアピールすることができないと思います。また、今後研究者になる人には英語は必須です(少なくとも2024年12月の時点では)。 - リサーチインターンシップに応募する
OISTではインターンシッププログラムを募集しています。そこに積極的に応募するのが良いと思います。その際に、PIにCVとarXivの論文を一緒に送りましょう。私は毎日たくさんの研究室希望のメールを受け取ります(もちろん全てに返すことは不可能です)その中で論文を一緒に送ってくれる人はとても稀です。なので、論文を書いて送るのはとても有効だと思います。 - 良い推薦書を書いてもらいましょう
OISTは推薦書の提出を求めます。OISTに限らず海外大に応募の際には強い推薦書があるのは重要ですし、ポジションによっては推薦書が全てです。強い推薦書を書いてもらうためには日々の研究室での活動や授業での取り組みの姿勢が評価されます。また、複数の推薦書が重要となりますので、研究室だけではなく色々な人と共同研究して推薦書を書いてもらえるようにできると良いと思います。
入試対策・倍率
入試対策は濱田さんのnoteに詳しく載ってます。全てが全て有効か私には良くわかりませんが、参考になる点もあると思います。
OISTでは入試の統計情報を以前はホームページで公開していました。ただ、最近ホームページの更新で情報がどこにあるか全然わからず、私は調べても見つかりませんでした。以前の情報はこちらに一部載っています。ただ、倍率は参考程度にすることをオススメします。他の大学は受験料が必要だったりしますが、OISTは受験料が無料ですので、必然的に応募者数は多くなります。個人的には良い研究をすることがいちばんの近道だと思ってます。
研究室に在籍しているポスドクや学生に直接コンタクトする
上記を無事クリアできてOISTに入学されたら、次はどの研究室に申し込むかですね! ただ、このプロセスもとても大切です。博士課程の5年は研究をするにはそんなに長くないですが、短くもないです。その際に、PIとの相性は非常に重要です。
日本だと、とりあえずPIにコンタクトを取りますよね。ただ、PIとだけ話すのはオススメしません。私もPIですが、PI目線だと研究室の研究を進めることや、いかにして研究費を外部から取ってくるかとかが重要だったりします。そうすると、その分話す際にバイアスが入ります。あと都合の悪いことは言わなかったりするケースもあると思います。そのバイアスはPI自身も気がついてないことがありますので、その辺はきちんと客観的な意見も知るようにした方が良いと思います。
そこで個人的なオススメですが、研究室のポスドクや博士課程の学生に直接コンタクトを取るです。私の研究室でも、私はあまり知ることは少ないですが、結構以前に研究室で受け入れたインターン生や学生にPI(山田)がどうかということをコンタクトされているようです。たまに、入った後で、実は私の前のインターンにコンタクトしたとか教えてくれることがあります。つい最近は、7年くらい前に受け入れたインターンにコンタクトとった!と教えてもらいました。研究室はPIと合う合わないがありますので、このプロセスは非常に重要だと思います。
OISTの博士課程に興味を持っていただいたら、OISTの日々の情報はゆんたくhub掲示板にて情報を投げたりしていますので、是非チェックしてみてください!
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